ダガータイプブレードの規制に鑑みて
痛ましい事件の被害者の方々には、心よりお悔やみ申し上げます。

もう少し速く所信表明すべきでしたが、少々心が乱れておりまして、今になっていまいました。
規制については各報道にて言われているとおり、もはや不回避といえる状況です。
事此処にいたっては毒杯をあおるソクラテスの心境ですが、所信だけは表明しておきます。
私の製作した、今後違法となるであろうナイフ(ダガーモデル等)の適法加工を、無償でおこないます。
ショウ等で直接買われた物も、販売店経由の物も、オークション等で買われた物も適用致します。
加工はポイント部分をタントーポイントに変更、バックエッジを落とす、セレーションを刻む等になるかと思いますが、詳しくは
改正法の内容と、施行の状況にて判断したいと思います。又、海外販売への窓口も現在模索中です。


先日調査に訪れた警察の方にそれとなく聞いたところ、法改正後、警察に提出されたナイフは溶鉱炉いきになるとの事
(たぶん・・・といっておられたので確証はありませんが。)、私は自分の製作したナイフを我が子のように思っております、
自分の魂を削りだして作った分身と思っております。だからこそ顧客名簿なぞ言われるまでも無く取っておりましたし(我が子の
嫁ぎ先を知っておきたい親心、と理解していただきたい。)、おかしな人間の手に渡ることを極力注意しておりました。

しかしナイフマニアでもない人間の憎むべき所業により、我が子同然の作品が溶鉱炉送りになろうとしております。
私の作品だけの問題では有りません、海外の、国内メーカーの、魂の欠片ともいえる数多の芸術品が、幾許かの議論も
考慮も無く葬られようとしております。文化破壊行為と言わずして何といえばよいのでしょうか。断じて見過ごせる事ではありません。
お客様への責任を果たすと共に、私はメーカーとしての意地を貫きたいと思う所存です。




本来ならば皆様の御意見、反論の余地のあるブログなどでやるべきかとは思いましたが、取り急ぎ所信をまとめさせて頂きました。
そもそもファイティングモデルを作ることの是非や、表現の自由について等々、後日筆を改めさせて頂きたいと思います。
又、警察庁HP、H207.17新着情報「銃砲規制等の在り方に関する意見書」に対する意見の募集について より、今回の件について
意見募集しているようですので、あわせてご報告いたします。
議論尽くしての法改正ならば賛成したでしょうが、警察庁の有識者懇談会で出された報告書、
“銃砲規制等の在り方に関する意見書”53ページのうち、ナイフに関する項目1ページ、これで何を議論したと?

そもそもこの有識者懇談会は、佐世保事件での猟銃規制の為のもので、ナイフ規制については別個に懇談会を持つ
べきではないでしょうか。私の不勉強による物かもしれませんが、今回の有識者の中にナイフ業界の現状を認識して
おられる方がいらっしゃるとは思えません。
カスタムナイフメーカーとして、とってつけた様な議論で表現の自由を侵害されるのは甚だ遺憾です。


とはいえ有識者の中に、ナイフ業界の人間が入っていたとしても、規制は避けえなかったと思われます。
今年の岐阜県でのナイフショウは、ダガーナイフ全面持込禁止、15センチ以上の刃物の持込禁止、ショーでの購入者の
リストを主催側に提出、といった措置がとられるようですし、カスタムナイフ団体主催のショウでもダガーは不可と聞いております。
どうやら業界的にもダガーを切り捨てるようです。
その判断を私は批判、否定しません。業界全体の為、身を斬る思いでとった、まさに苦渋の選択であったと、信じております。


ですが、おそらく他のメーカーよりもダガー、ダブルエッジのナイフを製作してきた私には、私のナイフを選んでくれたお客様に
対して重い責任を負っております。また、自身の製作したナイフへの愛情と誇りを持っております。
よって、私は私にできる範囲で、責任を取らせて頂きたいと思います。
今回の所謂“ダガーナイフ”規制には、断固として反対の立場をとらせていただきます。

−今回の法改正が、文化材に対する幾許かの配慮が有る事を祈って−

                          平成20年7月22日      カスタムナイフメーカー  根本朋之